352.絆食(2008.01.15掲載)
元旦早々渋滞に巻き込まれてしまった。初詣の帰路、某量販店の初売りに押し寄せる車列に遭遇したのだ。なぜ1月1日から買い物に出かけるのか。なぜ家族団らんのこたつで初春をことほがないのか。 一切の経済活動が停止した街の凛とした空気に漂う練炭の匂い。あのシャンとして気が引き締まるお正月に家族が揃うことで、節目を共感し、絆が再確認できるのではないか。 2007年のCMグランプリ受賞作品を見ると、そんな絆を販促につなげる作品が上位を占めていた。 1位…白戸(ホワイト)家の日常を描いた、ソフトバンクモバイルの「SoftBank」。2位…資生堂「TSUBAKI」。3位…家族4人が一緒にゲームを楽しむ任天堂「Wii」。4位…はじける中高生に向けた江崎グリコの「ポッキー」。5位…夫の帰りを待つ妻のエプロン姿が新鮮だったサントリーの「金麦」。ランキング外…当時を知らない若者と父親の会話ネタになった、江川卓と小林繁が28年ぶりに対話する黄桜「企業CM」。 CM総合研究所の関根建男代表は、「核家族やシングルが増え、一人でいることの先行き不安感を映しているのでは」と語る。確かに、団らん消費を狙うという戦略もありだな。 食品業界でもシングルは歓迎されない。現在、単身世帯比率は29.5%だが、食費比率で見ると、単身世帯は19.3%しかない。つまり、シングルは食事にお金をかけないのだ。 だから、絆食の典型ともいえる鍋関連商材で消費を喚起する。暖冬の逆風に負けじと、量販店の生鮮コーナーに鍋つゆの関連販売を並べるのである。野菜コーナーには寄せ鍋つゆ、鮮魚コーナーには海鮮鍋つゆ、精肉コーナーにはすきやきのタレ。 家族が揃う食事は多めに作るし手間もかける。 個食から絆食に路線変更を図る、2008年なのである。
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