353.副業は非常食(2008.01.21掲載)
本年1月13日付の読売新聞朝刊に、雪山で遭難した55歳の男性が12日ぶりに生還した、という記事が掲載されていた。昨年12月30日に福島、山形両県にまたがる吾妻連峰に登り、強い吹雪で道に迷い、11日夕方に福島県のスキー場近くで無事発見されたらしいのだが、この記事の中に気になる一文を見つけた。 「食料が4日に尽きた後は、雪や沢の水を口にし、だし調味料や塩をなめて飢えをしのいだ」 だし調味料?顆粒状のだしの素のことか。 おそらくは、テントで料理を作る際の調味料として常備していたのだと思うが、雪山で1週間も命をつないだのだとしたら、これは画期的なことである。 考えてみれば、だしの素は食塩30%、アミノ酸30%、糖類30%、かつお節10%が大まかな配合で、命に必要な食塩、アミノ酸、糖が均等に配されたバランス栄養食ではないか。足りないのは脂肪分くらいだ。 戦時下、貴重なタンパク源として重宝されたかつお節に次ぐ和風非常食誕生ということになりそうだが、賞味期間がやや気になる。だしの素の賞味期間は1年6ヶ月。非常食なら3年は必要だろう。 実際、大塚製薬が昨春発売した非常食用のカロリーメイト、「カロリーメイト ロングライフ」の賞味期間は3年に設定されている。一般的なカロリーメイトの配合を少し変え、賞味期間を延長したらしい。 ならば、「だしの素 ロングライフ」を開発するか。いやいやそれは本末転倒。だしの素の本業は「だし」で、非常食はあくまで副業なのだ。 件の遭難者が料理好きだからだしの素を持っていたのか、はたまた登山にだしの素が常識なのかは不明だが、とにかく、ひかえめな副業で人命救助をしたことは誇れる事実である。 だしの素の2008年初春大仕事なのである。
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