354.40代(2008.01.28掲載)
量販店の食料品売場で、買い物客のかごの中身を日がな一日ながめていると、ある法則の存在に気づく。それは、若年層主婦のかごは中身を見ただけで夕食メニューを想像できるが、高齢者層主婦のかごからはメニューなど全く推測不能、という法則である。 若年層主婦のかごにあるのは、カレールー、麻婆豆腐の素、焼肉のタレなど、メニュー限定の加工食品とその食材。対して、高齢者層主婦のかごには加工食品が少なく、おまけに冷蔵庫の残り物なんかもイメージしながら買っているから、何を作ろうとしているのかさっぱりわからないのである。 この両者の境界線が、40代にあるのではないかというデータを見つけた。 インテージという調査会社が行った家庭での食材出現率調査によると、40代と50代の食材使用実態に大きな開きがあるのだ。 内食で醤油を使う比率…50代34%、40代25%、30代24%、20代24%。内食で鮮魚を調理する比率…50代28%、40代20%、30代16%、20代15%。揚げ物を惣菜・弁当で済ませる比率…50代27%、40代40%、30代42%、20代45%。40代以下がひとかたまりのデータで、50代のデータだけが突出している。 同社の栗原千明氏によると、「主婦が夜の献立を考えるとき、かつては『何を作ろうか』から始まった。いまは『何を食べようか』がスタート地点だ。次に、食べたいものをどうやって調達するか、に進む」らしい。40代以下は、「何を食べようか」世代ということか。 ファミレス、ファストフード、大型量販店が生まれ、食品業界が変わりはじめた70年代に多感な幼少期を過ごした40代。ちゃぶ台からテーブルへの食卓移行を経験した40代。町内の「かどみせ」衰退を目の当たりにした40代。行商の魚屋さんが廃業した日のことが忘れられない40代。 給食を残しても怒られなくなったあの日から、日本の食卓は変わりはじめたのか。 消費動向のカギを握っているのかいないのか。食文化の境界線上をさまよう、モラトリアムな40代なのである。
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