355.昭和館(2008.02.4掲載)
九段の昭和館に行ってきた。昭和館は、その名の通り「昭和」を展示する博物館であるが、九段という場所柄、展示品は戦中戦後に特化(昭和10年頃〜30年頃)。運営する財団法人日本遺族会のコンセプトが明確に伝わる熱い施設なのだ。 入場料300円は安い。子マンモスだか子象だかわからない「リューバ」を800円で見るより値打ちがある(丸ビル1階「奇蹟のマンモスリューバ展」より)。 6階と7階の常設展示室には戦中戦後グッズが満載だが、ガラス越しの展示だけに、豊後高田市「昭和の町」や新横浜「ラーメン博物館」のようなレトロ気分にどっぷり浸る雰囲気ではない。 その代わり、戦時下の暮らしの細部が勉強できる。職場の上司がよく口にする「配給切符」「すいとん」「隣組」「代用品」「虫下し」などの実態と背景が、実にリアルに学べるのだ。 かつお節屋の長老が問わず語りに思い出す「国民学校」についても勉強できた。昭和16年4月に「尋常小学校」が「国民学校」に変わり、初等科6年、高等科2年で皇国民を錬成。教科を見るとかなり濃厚である。国民科の「修身」、体練科の「武道」、芸能科の「家事」、実業科の「水産業」などは、平成の御代でも渇望される最重要科目ではないか。 戦中派の涙腺をくすぐる貴重な展示品の数々であるが、時々、ふと我に返る展示品に出くわす。手回し式のローラーで脱水する洗濯機、トースター型の木製あんか、蓄音機…。むかし、家で使っていたものがけっこう展示されているではないか。幼時の記憶は、もはや博物学なのか。 懐かしさと寂しさに揺れながら、九段坂を後にする昭和男なのであった。
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