356.うんちの利用(2008.02.12掲載)
昨今の食品騒動に関する報道で、必ず出てくるフレーズがある。それは、「食糧自給率39%は先進国中最低」。種々の騒動の起点は全てここにあるといった感じだろう。 これを受けてか、2月5日付の読売新聞朝刊で、同社記者の「完全自給食体験記」が紹介されていた。現在、国民1人当たりに供給されている1日のエネルギー2548キロ・カロリーのうち、国産食材で供給できるエネルギーは996キロ・カロリーのみ。この996キロ・カロリーの純国産メニューで、4日間を過ごすというレボートである。 米、イモ、魚中心の献立だったが、「しょうゆはほぼ100%輸入大豆で作られており、今回は使えないことになっている」という嘆きが印象的だった。醤油が使えないのは哀しいな。 ここで話をコペルニクス的に飛ばし、うんちネタへ。 特許庁が監修する知的財産権雑誌「発明」の2月号で、動物のうんちをさまざまな方面に利用する革新的技術が紹介されていた。食料自給率向上より、うんちのハイテク利用の方が日本人の知恵を生かせるかもしれない。 例えば、牛のうんちから発生するメタンガスを分子サイズの孔を持つゼオライト触媒に通すことで、ベンゼンと水素を生成させる技術。原油価格高騰で以前の5倍に上昇したベンゼンが、高騰前の35円/kgで1100万トンも生産できるというのだ(水素は15円/立方メートルで1290億立方メートル生産可能)。 他には、笹を食べまくるパンダの消化酵素に期待して、パンダのうんちを生ゴミ処理に利用する技術。年間2000万トンといわれる国内の食品廃棄物をパンダが救うのである。 奇抜なアイディアとしては、ライオンのうんちでニホンジカの列車衝突を防ぐ技術がおもしろい。ライオンのうんちにはニホンジカの忌避物質が含まれていて、うんち抽出物をJRの線路に散布することでニホンジカが寄りつかないというのだ。出会うはずのない種の間に忌避物質が存在するなんて、実に不思議。 資源のない国が活路を見出す革新技術。いままで、食品加工という入口ばかりに目を向けていたが、うんちの利用という出口の研究も捨てがたい。 うんち利用率100%を目指せばいいのである。
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