362.アタックの記憶(2008.03.24掲載)
前号(第361号)で、40年前に流行語となった「大きいことはいいことだ」という森永エールチョコレートのCMを紹介した。 その20年後の1987年。今度は、小さいことをアピールする商品がデビューし、あっという間に市場を席巻した。せっけんではなく洗剤。花王のコンパクト洗剤「アタック」である。 それまで、洗剤といえば4kgもあるデカ箱で、スーパーで洗剤を買うとそれ以外のものが買えなかった。それが体積比4分の1、使用量2分の1まで小さくなったのだから、画期的な技術革新である。 核となった技術は、アルカリ性でも作用する酵素の開発と洗剤粒子の圧縮で、特許出願件数にして91件。それぞれ、「高活性バイオ酵素」「サッと溶けるマイクロ粒子」といった商品のキャッチコピーに活用され、CMとしてお茶の間に伝達されたのだった。 同じく20年前、筆者は、旨味成分の含有量が従来品の2倍という画期的なかつお節を開発。キャッチコピーを「同じ使用量で2倍のだしが取れる」にするか、「使用量が2分の1ですむ」にするか迷ったあげく、アタックの成功に倣って後者で世に問うた。 が、売れなかった。 かつお節というスローフードな天然系食品に、「2分の1」という効率を付加したのがいけなかったのか、はたまた使用量を減らしたいと思っている人などいなかったのか…。 成功要因を学ぶべく、ふたたび「アタック」を見る。 TVアニメ「アタックNo.1」からヒントを得たというネーミングも、ヒットの一助になったのではないか。1969年〜71年の放送当時小学生だったスポ根少女が母親になり、主人公「鮎原こずえ」の白いユニフォームに「驚きの白さ」を重ねたのかもしれない。 アニメの記憶をネーミングに利用した、驚きの商品戦略なのである。
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