368.敗軍の将商品を語る(2008.05.07掲載)
当コラムでよく引用する雑誌に、「日経新商品ウォッチャー」という新商品専門誌がある。この雑誌のいいところは、新商品発売時にヒットするかどうかの予想を立て、その半年後にきっちり実績を検証する点にある。 4月14日号でも、2007年下半期発売の新商品に関し、予想に反して売れなかった商品を検証し、開発者が同じ轍を踏まぬよう敗因を分析している。 例えば、トヨタ自動車の「マークX ジオ」。ミニバン、セダン、ワゴンと、1台で3通りの用途に対応できることを売りにしたが、月間平均販売台数3040台で目標の4000台に届かず。敗因は、ターゲットにした「子育てを終え、自由な時間を求める大人たち」が購入に動かなかったこと。確かに、行動的な熟年層が選ぶクルマとしては中途半端。「ジオ」というネーミングも中途半端。 ネーミングといえば、NTTドコモの携帯電話「L704i」。韓国LG電子が世界で1000万台販売したスライド式の通称「チョコレート」だが、人気ランキングの10位以内に入ることなく低迷。ノキア、サムスン、モトローラもそうだが、海外メーカー製の携帯電話はなぜか成功しない。「L704i」じゃなく、商品名を「チョコレート」にした方がよかったのでは。 チョコレートといえば、ロッテのチョコレート「姫のショコラ あん仕立て」も失速。「あんを使って和風仕立てのチョコレートを提案したが、インパクトがなかった」と開発担当者。これはいけそうなんだけどな。 すぐ敗因がわかったのは、日清フーズの「マ・マー レンジにおまかせスパゲティ」。電子レンジを使って5分でゆで上がる便利さを訴求したが、目標売り上げ1億5000万円は未達。熱湯ゆでに比べて時間3分の1、水5分の1、エネルギー消費10分の1で売価は同じという画期的新商品だったが、主婦の反応は冷たかった。 専用のレンジ容器が必要だったのだ。 開発者にとって敗因を語るのはつらい作業だが、消費者の目線からずれてしまったセンスを修正することは絶対に必要である。煮詰まったり、1回転したり、迷走したりしながら新商品を練っていると、常識的な欠点に気づかないことがある。 ときどき外の空気を吸うことが必要なのである。
|
column menu
|