375.正当表示(2008.06.23掲載)
今月17日、ハウス食品の「六甲のおいしい水」に事実と異なる表示があったとして、公正取引委員会は同社に排除命令を通達した。不当表示の対象は売上金額にして過去最高の約367億円。年商1600億円超の優良企業の優良商品が挙げられたということで、業界に震撼が走った。 すでに1月18日製造分より削除済みの問題表記は、「六甲山地の花崗岩層に接触した雨水が地下水流となり、花崗岩のミネラルを含んでおいしくなる」という主旨だった。昨年10月の公正取引委員会査察以降、同社は六甲工場の水がこれに相当するという科学的根拠を何回も提出して説明したが、受け入れられなかったのだ。 これは厳しい。厳しすぎる。市場にはもっとあやしい水が数多あるではないか。電解水、パイウォーター、水晶水、始元水…。ミネラルウォーターの国内先駆者として、コンプライアンスを徹底していたはずの同社開発担当者と品質責任者。その苦悩はいかばかりか。 このニュースを受け、他社のミネラルウォーター担当者も、キャッチコピーの再確認に奔走しているに違いない。 例えば輸入ブランドトップの「ボルヴィック」は、「フランス中部オーヴェルニュ地方に広がる火山国立公園のピュイ山脈を水源として、北端にあるボルヴィック村の地下深くから採水」という詩的なコピーを掲げている。 開発者諸君、叙情コピー大いにけっこう。六甲の花崗岩もオーヴェルニュのピュイ山脈も、我々はその情緒を飲み干しているのである。山の神への畏怖と遙かなる異国の大地に思いを馳せているのである。もちろん偽装はいけないが、根拠がある商品に対して消費者行政という錦旗を乱発するのはどうかと思う。 こうなったら、リスク回避策としてキャッチコピーの表記を廃止し、商品名だけで中身を表現するという手もある。件のハウス食品は、中身が伝わる商品名を上手く付けることで有名である。 とんこつラーメン「うまかっちゃん」、とうもろこし系スナック菓子「とんがりコーン」、えんどう豆系スナック菓子「ジャック」、そして「六甲のおいしい水」。 十分に中身がわかる、正当表示なのである。
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