379.ガッテン(2008.07.22掲載)
小学校2年生の時、PTAの会合から帰ってきた母親がこんなことを言った。 「窪田君は毎週NHKの『新日本紀行』を見て、内容をノートにまとめてるらしいわよ。あなたも見習いなさい」 新日本紀行は、人々の暮らしの細部に切り込んだ大人向けのドキュメンタリー番組(1963〜81年放送)。小2にして文化人類学的考察に挑むとは、さすが神童窪田君(その後、彼は東大に進む)。 母親の言うことは何でも聞いていた素直な筆者は、早速ノート片手にテレビの前に正座。科学系バラエティ番組の元祖である、「四つの目」のまとめに挑戦したのだ(1966〜72年放送)。 四つの目をシンボライズした4台のモニターテレビが印象的だったこの番組、トンボの羽根の動き、カエルがハエを食べる様子、ピッチャーの投球モーション等、当時にして日本初の映像が衝撃的だった。ちなみに四つの目とは、肉眼、時間の目、拡大の目、透視の目である。 肝心のまとめノートであるが、番組があまりにすばらしくまとまっていたため、それ以上まとめる術もなく、あっさり2回で挫折してしまった。 言い訳ではないが、NHKのまとめ芸は本当にすごい。「四つの目」以降、「レンズはさぐる(1972〜78年)」「ウルトラアイ(1978〜86年)」「トライ&トライ(1986〜91年)」「くらべてみれば(1991〜94年)」「なせばなるほど(1994〜95年)」「ためしてガッテン(1995年〜)」と番組の変遷はあったが、レベルの高さとまとめのうまさは常に民放を圧倒していた。 先日のガッテンもすごかった。冷凍庫で水を凍らす場合、常温の水より100℃の水の方が速く凍るという衝撃のデータを紹介していたのだ。 ある日、アフリカのムペンバ君(15歳)が学校の授業で牛乳アイスを作っていた。砂糖を溶かす工程に手間取った彼は、粗熱を取らないでアツアツのまま牛乳を冷凍庫に入れた。ところが、ムペンバ君の牛乳の方が、先に入れていたクラスメイトの牛乳より速く凍ったのだ。すごい。その後、数多の研究者が挑んだが、「ムペンバ効果」と呼ばれるこの現象のメカニズムは、いまだに謎らしい。 四つの目のまとめ修行に挫折しつつも、NHKの科学番組を追い続けて40年。自身のまとめ芸の由来はNHKかと、ガッテンしたのであった。
|
column menu
|