382.むかしの話(2008.08.11掲載)
接待の席で、60歳〜70歳代の客人のレトロネタに話を合わせるという状況がよく発生する。気候の話から入り、つかみは政治経済、盛り上がったところで「むかしの話」である。 当然、予習は欠かせない。昭和30年代を中心に世相をカバーするわけだが、娯楽の少ない時代だけに、「プロ野球」「プロレス」「映画」「学生運動」あたりを押さえておけば、打率8割前後で会話はヒットする。 教材はNHKが多い。先日も、教育テレビで夜10時25分から放送の「私のこだわり人物伝 愛しの悪役レスラーたち」で勉強したネタが生きた。 卑劣なジャップグレート東郷、銀髪鬼ブラッシー、人間山脈アンドレ・ザ・ジャイアント、原爆頭突き大木金太郎…。白黒テレビなのに失神者が続出したブラッシーの噛みつき流血騒動なんか、老バイヤーが身を乗り出して反応してくれた。 意外とかみ合わず、場が白けた経験が多いのが食ネタである。配給米、脱脂粉乳、すいとん等の定番キーワードはあるが、それぞれの経済事情や居住環境で話は大きく変わってくる。同世代の給食ネタでも、牛乳が瓶入りか紙パックか、お残しが許されたかどうか等、個人差は大きい。とにかく、琴線に触れたり涙腺を壊したりする食ネタは、封印した方が無難なのだ。 最も難易度が高いのは旧学制に関する話ではないか。尋常小学校、高等小学校、旧制中学、旧制高校、旧帝大。これに、陸軍士官学校、海軍兵学校が絡んでくるから超複雑。いまだにつながらない部分が多い。 こんな感じで頑張ってはいるが、得意先が世代交代すれば、学習したむかしの話など何の役にも立たなくなる。昭和50年生まれを接待する日も近いのである。 となると、ドラゴンボールやガンダム等のアニメを学び、カラオケでラップを歌わなければならないのか。苦手分野を最初から勉強しなければならないのか。 いやいや、開き直ってこちら側の「むかしの話」を浴びせてやるのも一興か、と思ったりするのである。
|
column menu
|