388.東京観光(2008.09.29掲載)
休み明け朝一番にお台場で仕事があって、休日から上京。せっかくだからと、いわゆる「観光コース」を散策してみた。 その1.築地魚市場。豊洲への移転問題の渦中にある築地を長靴持参で訪問。20年前に勤労奉仕していた頃と変わったのは、外国人観光客の多さ。海外向けガイドブックに、東京人気スポットの第5位として掲載された影響か。異人さんたちは、場内を疾走するターレット・トラック(通称ターレ)を興味津々で撮影していた。 仲卸業者約850社、取扱額約4900億円。世界一の魚市場が外国人に受けるのは、喧噪、混沌、混乱の中に秩序があるからだという。この日本的ファジイ、日本的カオスにとりつかれ、「TSUKIJI」なる著書まであるハーバード大のベスター教授は、「江戸時代から続く魚河岸の形態は、文化財として考えるべきだ」と移転に反対する。 その2.神谷バーの電気ブラン。太宰治が「人間失格」の中で、「…酔いの早く発するのは、電気ブランの右に出るものはないと保証し、とにかくその勘定に就いては自分に、一つも不安、恐怖を覚えさせた事がありませんでした。」と評した伝説のカクテル「電気ブラン」。遅れてきた文学青年にとってのマストアイテムなのだ。 1杯260円、アルコール度数30度。太宰の言う通りコストパフォーマンスは高い。しかし、店内の人の多さにげんなり。すぐ近くの雷門から流れてきた観光客の人いきれに悪酔いし、文学を語る余裕など全くなかった。みんな、太宰を想ってここに足を運んだのかな? その3.サントリーホール。神谷バーの酔いを覚ました後、世界最高レベルの響きでストラディヴァリウスに酔う。田舎者とはいえ、「聴く」という行為に格差はないはず。 であったが、休憩時間に聞こえてきた隣人の会話に、たぶん一生追いつくことのないであろう格差を痛感した。「この音、ウィーンで聴いた時とちょっと違うわね」 「今度、うちのガーデンパーティーでご披露するわ」。…。 酔って学んでへこんだ休日。明日の糧になることを願いつつ、東京観光の一日を終えたのであった。
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