395.お見舞いの水(2008.11.17掲載)
瀬戸内海沿岸は今年の夏も雨が少なく取水制限が実施されたが、平成6年の大渇水ほどではなく、なんとか猛暑を乗り切ることができた。 平六渇水(へいろくかっすい)と呼ばれるあの夏は、水の出る時間帯が1日4時間前後。ペットボトルのミネラルウォーターで歯を磨いたり、風呂の残り湯をトイレに流したりした。 職場には全国からお見舞いのミネラルウォーターが届いた。もらっておいて文句を言うのは失礼極まりないが、だし取りの水として全く使えないものが2種類あった。 それは、硬度1000以上の欧州系の硬水と、炭酸水。前者は全くだしが取れず、後者はだしが濁った。 フォンドボーやブイヨンなど、大陸系の畜肉だしなら問題ないと思うが、和食のだしには硬度120以下の軟水が適しており、炭酸は少ない方がいい。かつお節も昆布も繊細な水を好むのだ。 ところが、である。東京医科歯科大学の藤田紘一郎先生によると、悪者にされた硬水と炭酸水、実は、健康的な効能が科学的に証明されている数少ない水らしいのだ。 硬水はカルシウム不足を解消してくれる。軟水で暮らす日本人は慢性的なカルシウム欠乏状態であるが、不足が長期にわたると骨から過剰にカルシウムが溶け出し、血管を硬くして心筋梗塞を誘発することがある。食卓の洋風化で食事由来のカルシウムが減少してしまった今日、硬水摂取は有効な健康法なのだ。 また、炭酸水はスポーツの後の疲労回復に効果的。炭酸水の摂取で体内の酸素濃度が減り、血管が広がることで新陳代謝が促進され、疲労が軽減されるらしい。 パイウォーター、クラスター水、マイナスイオン水等のあやしい水が跋扈する昨今、国が効用を認めているアルカリイオン水と共に、硬水と炭酸水はもらってうれしい健康水。 そこまで考えてお見舞いの水を送ってくれたのかな。 だしは取れなかったが、14年前の心遣いに遅ればせながら感謝したのであった。
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