398.だけレシピ(2008.12.8掲載)
世間は不況のあおりで外食が減り、ひさびさ内食回帰の気配である。ただし、そのメニューは以前のようなじっくり作り込む家庭料理ではなく、不慣れな男性でもできる「だけレシピ」。 素材は1つだけ、説明は1行だけ、調理時間は1分だけ…。 愛情は形だけ、とでも言いたげなコピーであるが、せっかくのチャンス。料理の材料となる加工食品も、この流れに乗らなければならない。 そこで小生、「1つかみ入れるだけ」キャンペーンを準備中である。つまりはだし取り。煩雑なイメージのある和風だしの取り方であるが、かつお節を厚く削った厚削りであれば熱湯に「入れるだけ」でいいのだ。 沸騰したお湯1リットルに厚削りを1つかみ入れて約10分。厚く削ったかつお節はそのまま具材になるからこし取り不要。薄削りは3つかみ必要だし、こし取らなければぐじゃぐじゃになってしまう。 この「だけレシピ」、実は沖縄の家庭では昔から定着していた食習慣である。だから、沖縄のスーパーの棚には厚削りしかなく、かつお節の消費量も全国平均の約7倍で日本一。 古くは中国大陸、朝鮮半島に薩摩、戦後はアメリカの食文化を受け入れ、土着の食習慣とのハイブリッドを形成してきた沖縄。混沌の中にも日本人としての筋が通っていたのは、かつおだしがその根底にあったからではないか。 そして、吸収した文化を醸成し、本土に向けて発信した結果が現在の沖縄ブームである。沖縄出身の芸能人があらゆる分野で成功するのは、かつおだしに由来する同胞としての安心感と、異文化への憧憬と好奇心が両立するからだと思うのである。 1つかみ入れるだけで大和魂が腹に染みいるのだ。ナショナリズム云々を議論する前に、まずはだしを効かせることから始めようではないか。
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