408.ジンクス(2009.2.23掲載)
有機化学を生業とする大学教授の友人は、「フラスコを3回叩いてから振るといい結晶が取れる」というジンクスを貫き、論文を20報書いた。 ショットバーを営む友人は、「レモンスライスを厚切りにした翌日は満席になる」というジンクスを信じ、2号店を出した。 10歳年上のサラリーマンの従兄弟は、「会議が始まって10分以内に必ず発言する」というジンクスを守り、「雇われ」ながら社長に上り詰めた。 ジンクスとは、勝てば官軍的成功譚か、はたまた禁忌をかわすまじないか。 いずれにせよ、たいした根拠はないと思うのだが、数十億円を稼ぐメジャーリーグの日本人投手が必ず白線をまたいでマウンドに向かう姿を見ると、ジンクスの核心は根拠以前の心のよりどころであることがわかる。 一方、明確な根拠が存在するジンクスもある。 「カップルでディズニーランドに行くと必ず別れる」 それは、アトラクションの長い待ち時間に会話のネタも尽きてしまい、いかなトークの達人も「つまらない人」というレッテルを貼られ、破局に導かれてしまうから。と、トークの神様明石家さんまさんが解説していた。 「カップルで井の頭公園のボートに乗ると必ず別れる」 それは、公園ボートのオールさばきは意外と難しく、池の真ん中でうろたえる彼氏の姿を見て「本当にこの人の船(人生)に賭けていいのか」と悲観してしまうから。と、社長になったボート部出身の従兄弟が解説してくれた。 ジンクス、迷信、おまじない…。 よりどころにせよ禁忌にせよ言い訳の種にだけはしないよう、自身のジンクスをひそかに守っていきたいと思うのである。
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