412.カレーは上から、ラーメンは下から(2009.3.23掲載)
本稿タイトルは、食文化研究家森枝卓士氏のコメントである。 「カレーは上から、ラーメンは下から」 食べる時のマナーかルール、あるいはおいしく食べる裏技のようなものかなと思ったが、真相は伝搬の話だった。 カレーは上(軍隊)から、ラーメンは下(庶民)から日本に広まったというのだ。 今日の日本風カレーは、明治初期に英国海軍から大日本帝國海軍に伝わったとされている。インド風カレーとの違いは、炒めた小麦粉でとろみを付ける点。とろみがあると、船が揺れても食器からルーがこぼれない。 つまり、日本風カレー=海軍カレー。今でも、海上自衛隊では毎週金曜日に全ての部署でカレーを食べる(曜日の感覚を取り戻すため)。ちなみに陸軍カレーがないのは、陸上だと風に乗ってカレーの匂いが敵陣に届くという理由で敬遠されていたから。なるほど、これでは奇襲がかけられない。 話は変わるが、カレーが日本に伝わった時代から半世紀ほど遡った江戸後期、東海道五十三次の宿場町である袋井宿(静岡県袋井市)で「たまごふわふわ」という洋風っぽい卵料理が出されていた。 小鍋に入れたすまし汁を煮立て、少量の砂糖を加えて泡立てた卵を一気に加えて蓋をするだけ。ムースのようなふわふわの食感で、味は茶碗蒸しに近い。当時としては斬新なメニューだったに違いない。 年間500万人の観光客を受け入れながら、これといった名物料理がない袋井市がこのメニューに注目。観光協会がたまごふわふわを商標登録し、町おこしに役立てている。 カレーは上から、ラーメンは下から、たまごふわふわは袋井から。 食文化の伝搬はさまざまなのである。
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