432.デフレめし(2009.8.10掲載)
2万部出たらヒットといわれる料理本の世界で、「すごい!もやしレシピ(角川SSコミュニケーションズ刊・780円)」が12万部も売れた。 この、おしゃれに節約できるレシピ本の後押しもあって、もやしが大ブレイク。1袋250gで30〜40円というデフレの申し子は、大手量販店で軒並み20%増の伸びを示している。 これまでにも、「365日たまごかけごはんの本(読売連合広告社刊・735円)」や「おとなのねこまんま(泰文堂刊・1050円)」等の節約系レシピ本がヒットし、食卓のコストダウンに貢献してきた。どうりで加工食品の売り上げが伸びないわけだ。 けど、もやしも、たまごかけごはんも、ねこまんまも、僕らの昭和では普通にごちそうメニューだったんだ。生活が苦しくてたまごかけごはんを食べた事なんて、一度だってない。なんだか複雑である。 どうせ節約を楽しむなら中途半端なメニューはやめて、なぎら健壱さんが最後の1000円を握りしめて買ったという「食べられる野草(保育社刊・735円)」に挑戦してもらいたいものである。 楽しく節約といえば、職場の若手が低価格でエネルギーを摂取する目的で、1円当たりのカロリーが最も高い食材を探していた。例えば、油揚げ…354kcal÷128円=1.71kcal/円、チーズ…432kcal÷278円=1.55kcal/円等々。これもおもしろい。 とにかく、節約が恥ずかしくないことはいいことである。 幼時、町外れのパン屋までパンの耳をもらいに行ったことがあった。油で揚げて砂糖をまぶしたパンの耳は、恥ずかしさを忘れるほどおいしかった。 山崎製パンが「ランチパック」製造時に出るパンの耳にチョコをしみこませて2度焼きし、「チョコの山」として発売。1ヶ月に2億5千万円も売れているという。 時代に抗うつもりはないが、僕らをセンチメンタルにさせるデフレめしのヒットを素直に喜べない今日この頃である。
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