433.戦場の水(2009.8.24掲載)
8月14日に放送されたNHK特番、「忘れないで、わたしたちの戦争〜中居正広が聞く戦場の声〜」に涙した。 戦争体験者へのインタビューを中心とする検証番組だが、その多くがこれまでに聞いたことのない壮絶な内容だった。余命を悟った先達が後世を憂い、平和を念じて絞り出した魂の声だと思った。 「わたし、人を殺しました。上官の命令は絶対でした」 「背負った荷の重さで肩ひもが擦れ、皮がめくれ、ウジがわきました。今の若い方は、他に方法があったのではと思うかもしれませんが、どうしようもないのが戦場なんです」 「部下に死ねと命じた私が生き残ってしまいました。申し訳なく外出は未だに控えています」 その日の就寝前、コップ1杯の水がとてつもなく重たかった。 戦場では水の奪い合いで命を落とすこともあるというのに、平和ボケの今日、飽食でドロドロになった血を薄めるように水をあおる。 日本医科大腎臓内科教授の飯野靖彦氏によると、成人が通常の生活の中で汗や尿として失う水分量は、1日約2.5リットル。対して食事で摂る水分は約1リットル。つまり、毎日1〜2リットル程度は水を飲まなければならないというのだ。 2リットルの水って、戦場では何人分なんだろう。炎天下の行軍で脱水症状になった場合、どうやって回復させたのだろう。 ちなみに、脱水時の経口補水液を手作りする場合は、水1リットルに砂糖40グラムと塩3グラム。スポーツドリンクより効果があるらしい。もちろん、戦場では詮無い配合であるが。 日付が変わった8月15日、コップ一杯の水を英霊に捧げつつ、同番組の戦争体験者のこんなコメントに思いを馳せた。 「途中から戦友の死を悲しまなくなりました。ただ祈るだけでした」 世の中から戦争体験者がいなくなるとまた戦争が始まるという。ただただ平和を祈る8月15日なのである。
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