435.幸福度を指標に商品を作れ(2009.9.7掲載)
お盆休み中の8月16日、刺激的な新聞の見出しに釘付けになった。 「幸福度を指標に商品を作れ」 それは、読売新聞朝刊の書評コーナーに寄稿した、ジャーナリスト三神万里子氏のコラムのタイトルである。 「モノやサービスが売れないのは、組織目線の豊かさと、個人の幸福感がずれているからだ」「モノが溢れても幸福にはなれず、尊敬もされない。 成長とは消費ではない」 そして、GNP(国民総生産)の代わりに、人々の幸福度を指標とするGNH(国民総幸福)を導入したブータンの事例を紹介している。 「ブータンは大規模な産業振興をやめたが、国民の97%が幸福と感じるようになり、平均寿命は数十年で約20歳伸びた」 ふと、まんじゅう好きだった祖母のことを思い出した。 祖母が80歳代半ばにさしかかったある日、高血糖で医者から控えるように言われていたまんじゅうを押し入れから取り出し、幸せそうに食べる姿を目撃したことがあった。当時、学位を取ったばかりの青二才は血糖値を気遣いつつうんちくを語り、祖母からまんじゅうを奪ってしまった。 その半年後、祖母は他界した。 寿命を縮めたのは私だと思った。 余命幾ばくの老人から好物を取り上げ、いい気になっていた自分を恥じた。 身内の幸福も実現できない人間に、広く世間から評価される商品を作れるはずがないのである。 今後は、世に出る新商品を、幸福度を指標に評価してみようと思う。 例えば、山崎製パンの「モーニングバランス」。おいしさをそのままに血糖値の上昇を抑える食パンであるが、糖尿病を気にせず毎日おいしく食べられるのなら、この商品の幸福度は高い。 三神万里子氏はこう締めくくっていた。 「人々の幸福とは何か。今後は、これを考え抜いた商品だけが生き残りそうだ」 生き残りをかけて、幸福について考え抜く所存である。
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