448.濱口梧陵(はまぐちごりょう)(2009.12.7掲載)
ある大学の医学部の講義で、TBS日曜夜9時放送のドラマ「JIN〜仁〜」を話題にしているという。 このドラマ、幕末の日本にタイムスリップしてしまった現代の外科医が、当時の道具や設備を工夫して病人やけが人を助けるというストーリー。まさに、環境が十分でない過疎地医療の格好のお手本かもしれない。 最新の設備に囲まれて医療を学んだ研修医が、いきなり無医村でじいちゃんばあちゃんの総合診療を行う。これもある意味タイムスリップなのだから。 どうせなら、医学部だけでなく農学部の講義でもこのドラマを取り上げてほしい。第7話で、江戸時代のヤマサ醤油が醤油麹の発酵技術を生かしてペニシリンの大量生産を行うシーンがあるのだ。醤油も発酵、抗生物質も発酵。麹かびと青かびの違いはあるが、食品メーカーが医療に関わる画期的なシーンだった。 ここで登場するのがヤマサ醤油7代目当主の濱口梧陵氏。石丸謙二郎さん演じる濱口氏は実在の人物で、ドラマ同様私財を投じて医療の発展に貢献した。同社のホームページを見ると、東大医学部の基礎である西洋医学所の再建に300両を寄付したとあった。すごい。 濱口氏に関するすごい話があと2つある。 まずは有名な「稲むらの火」。1854年12月24日、大地震発生の後に和歌山県広村を襲った大津波の前兆を感じた濱口氏は、丘の上の稲むらに火を付けて目印にし、闇夜の中で村人を救った。 そして「郵政民営化」。1871年に初代郵政大臣(駅逓頭/えきていのかみ)に就任した濱口氏は、小泉元首相より100年以上も早く郵政民営化を説くも、在任1ヶ月で反対派の前島密氏にその座を追われた。 それにしても幕末ならではのマルチな活躍である。 官と民、尊皇と攘夷、医学と農学がせめぎ合う幕末で輝いていた、濱口梧陵氏なのである。
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