453.街道を行く(2010.1.18掲載)
テレビ朝日の長寿番組「タモリ倶楽部」でよくやる街歩き企画を、NHK的に発展させた「ブラタモリ」が好評である。 古地図片手に江戸の名残を訪ね、路面の微妙な傾斜に昔日の川や水路を重ねる。タモリ倶楽部を少しメジャーにした感じではあるが、NHKでもタモリさんは真骨頂を発揮している。 江戸情緒を探るポイントは、坂と水路と街道。 転がると炭団(昔使われていた燃料)のように真っ黒になってしまうほど坂が急だった、本郷4丁目の炭団坂(たどんざか)。 かつて、文京区と台東区の境界線に流れていた藍染川と、その川を利用していた染物屋さんの「丁子屋」。 サラリーマンがたむろする秋葉原公園。ここが貨物駅だった頃の運河の名残である、石垣や橋の跡。 「かねやす」という歯磨き粉を売る店のある交差点が街と郊外の境になっていたため、「本郷もかねやすまでは江戸の内」と川柳に詠まれた本郷3丁目交差点。 字面を眺めているだけで寄席が恋しくなる風情ではないか。 ところで、話は江戸からそれるが、水産業界でいにしえの街道といえば、「鯖街道」である。 豊かな海幸に恵まれた若狭地域は、古代、朝廷に食料をおさめる「御食国(みけつくに)」と呼ばれていた。小浜から熊川宿を経て京都に海産物を運ぶ若狭街道は、鯖街道という二つ名で親しまれた。小浜で塩漬けにした鯖は、京に着く頃、ちょうどいいあんばいとなったのだ。 「京は遠ても十八里」。1里は半刻(1時間)かけて歩ける距離と言われており、小浜−京都間は徒歩18時間ということになる。鯖を担いで歩くには、かなりきついな。 人類の歴史において、今日のような高速の移動手段を獲得した期間はごく僅か。歩いてなんぼである。ぶらぶらしてなんぼである。 街道と坂道を歩いて、歴史を体感してみたいと思うのである。
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