455.花嫁の父(2010.2.1掲載)
最近、職場や親族の婚礼が立て続けに3件あり、その都度、花嫁の父の胸中を察して目頭が熱くなった。 花嫁の父はどの段階で結婚を許したのだろう。花婿の誠実さをどうやって品定めしたのだろう。 お見合いの席で食事をするのは、ものを食べる時の所作に「育ち」が表れるから。ならば、花嫁の父はいじけて花婿に背を向けるのではなく、早い段階で酒席に誘うべきではないか。 そんなことに思いを巡らせていた矢先、日経メディカル2010年1月号で「患者の『嘘』をどこで見抜くか」という佐藤綾子博士のコラムを見つけた。患者のメッセージを的確に読み取り、正しい診療をするためのテクニックではあるが、花婿と対峙した時に使えるに違いない。 嘘は、言葉と体と顔に出る。 言葉の嘘。患者が嘘をつく時、言葉が出るまでの間が長くなる。「タバコはやめてください」「…はい、頑張ります」。この患者は頑張らない。もちろん、声が上ずったり、小さくなったり、話のスピードが早くなるのも嘘のサイン。 体の嘘。患者が膝の上に置いた手の指先を頻繁に組み替える。足先をバタバタと小さく揺する。自分の髪や鼻、あごの先を何度も触る。「適応動作(アダプターズ)」と呼ばれるこれらの行動を伴う発言には、嘘が混じっている。 顔の嘘。顔の上半分が無表情で、下半分のみ笑っている。まばたきの回数が多い(通常は1分間に38回前後)。舌で上唇をなめたり、上下の唇をかみ締めたりする。これらのサインも要注意。「目も口元も物を言う」のだ。 医学において患者は素人で医師はプロ、診察室ではよほどのことがない限り医師に対して「はい」としか言えない。 これって、花婿と花嫁の父の関係に似てるな。花嫁宅では「幸せにします」としか言いようがないのだから。 とにかく、ハンカチが離せない今日この頃である。
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