456.シェアリング(2010.2.8掲載)
日経産業地域研究所が実施した消費者の所有欲調査によると、モノがあり余る今日、消費者はモノの「個人所有」にあまりこだわらなくなってきたらしい。いわゆる「物欲」は、モノがない時代の最優先事項だったのだ。 ならば「共用」すべしということで、「誰かと共用したいモノ」アンケートのベスト3は、1位…別荘やリゾートマンション、2位…アウトドア用品、3位…ダイエット器具だった。ダイエット器具が選ばれた理由は、たぶん途中で挫折して邪魔になりそうなモノだから。 なるほど、三日坊主もシェアだな。 具体的なビジネスとしてよくマスコミに取り上げられるのは、カーシェアリングやシェアハウス、ブランドバッグのレンタル等。 特に、シェアハウスはTVドラマの舞台としてよく使われ、恋愛や友情が交錯する新世代の社交場として華やかに描かれている。だからちょっと憧れる。 首都圏の利用実態は20〜30代の社会人単身者が主流で、その7割が女性。共用部分はキッチン、台所、風呂など水回りくらいであとは個室。家賃は一般物件と変わらないが、共用部分があることを考えると居住空間を有効利用できるのが魅力らしい。 けどこれって、昔の学生下宿と同じじゃないか。「青雲荘」てな感じのネーミングに今にも倒壊しそうな木造ニス塗りのたたずまい。風呂はないが、台所とトイレは共用。ケータイのない時代だから赤電話の共用も必須だった。 共同炊事場のジントギ流し台の横にはコイン式のガスコンロがあり、ガス玉と呼ばれるコインを1枚10円前後で購入してご飯を炊いた。コンビニも吉野家もないのだから、自炊しないと生きていけなかった。 今日のシェアハウスの魅力として「話し相手が常にいる」ことが挙げられているが、昭和の学生下宿の炊事場には会話なんてなかったけどな。 低成長時代まっただ中の日本。循環型社会のお手本として江戸時代がよく取り上げられるが、共用社会のお手本としての昭和も、忘れてはいけないと思うのである。
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