461.本因坊のつまみ(2010.3.15掲載)
3月7日付読売新聞日曜版「異才列伝」のコーナーで、江戸から明治にかけての棋士、本因坊秀栄氏(1852〜1907年)が紹介されていた。 本因坊秀栄氏は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に仕えた本因坊算砂を開祖とする本因坊家の19世家元。名人中の名人と称される伝説の棋士だが、かなり頑固で金銭を毛嫌いする高潔の人。冬は浴衣に墨を塗って着る、清貧な暮らしぶりだったらしい。 ところがこの本因坊秀栄氏、「にんべん」のかつお節だけは喜んで受け取ったというのだ。かつお節を削り、1、2合の酒で晩酌するのが唯一の楽しみだったとか。 それにしても、こんなところに「にんべんのかつお節」が登場するとは。本因坊家は囲碁界最大のブランドだが、にんべんは乾物業界最大のブランドなんだな。 たしかに戦前の逸話として、「他社のかつお節をにんべんの包装紙に包み直して親戚に贈った」という、今日のコンプライアンス的には腰が抜けそうなネタを聞いたことがある。 当時のにんべんは、かなりのブランド価値だったに違いない。 現在、全世界で最も価値のある食品ブランドは「コカ・コーラ」であり、資産価値653億ドルといわれている(インターブランド社調査)。 しかし、日本企業のブランドランキングに食品メーカーはなかなか見あたらない。1位…トヨタ自動車、2位…キャノン、3位…任天堂、4位…ホンダ、5位…武田薬品。食品は、59位のキリンビールが最高である(2009日経ブランドランキング)。 自動車、カメラ、ゲーム…。日本の発展を支えた業界が日本ブランドを構築したわけで、そこに異論はないのだが、食品ブランドももう少し頑張ってほしいと思う。 現在の25世本因坊治勲(趙治勲)氏につまんでもらうブランドの出現を、切に願うのである。 ================================================================ 本因坊治勲氏は世襲ではなく、タイトル戦5連覇による本因坊です。
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