476.技術者、社長になる(2010.6.28掲載)
日本は文系優位の社会構造である。 多くの企業経営者が文系出身で、上場企業の社長の理系比率は3割にも満たない。また、自然科学系の公的研究機関でも文系がトップになることが多い。たまに理系出身の政治家が総理になって大変な騒動を引き起こすものだから、ますます「理系には任せられない」状況となっているのだ。 では、なぜ理系は経営者に不向きなのか。 まず、銭勘定ができない。理系の行動規範は常に真理の追求である。フィールドは大自然で、気持ちは昆虫採集に興じる少年のまま。ある意味オタク。実験データから法則を見いだすことはできても、損益計算書から限界利益率をはじくことには全く興味がない。 そして、データが全てだから融通が利かない。経営のためには時に「はったり」が必要だが、そんなマッドサイエンティスト的行為は、「錬金術師に身を落とすのか」と頑なに拒む。 理系不遇の我が国の産業界であるが、自分の技術や研究成果を活かして独立し、社長になった4人の技術者を月刊「Fole」6月号で紹介していた。 プラズマディスプレイの「篠田プラズマ」篠田社長(富士通OB)、リチウムイオン電池の「エナックス」小沢社長(ソニーOB)、量子ドットレーザーの「QDレーザー」菅原社長(富士通研究所OB)、半導体の「ザインエレクトロニクス」飯塚社長(東芝OB)。 世界最先端の技術を持って安定大企業を飛び出し、やりたいことに人生をかけた技術者たち。その後の銭勘定の苦難や、「はったり」の修羅場をどうくぐり抜けたのかを聞いてみたい。 ふと、1990年にフジテレビ系列で放送された「ラストダンス」という昼ドラマを思い出した。化学会社に勤める地味で真面目な研究員「真田左平」が特許を取得して12億円の大金を手にし、副社長として経営に参画。結果、さまざまなドロドロに巻き込まれ、人生が狂ってしまうというストーリー。主演の児玉清さんが悩める技術者を見事に演じていた。 くわばらくわばら。 まずは、銭勘定のできる技術者を目指そうと思うのである。 ================================================================ 昼ドラ「ラストダンス」には、礒野貴理さんも出演していました。
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