508.下から目線(2011.2.21掲載)
いまから10年ほど前、地元の新聞社が主催する「文章上達教室」に通っていたことがあった。毎週土曜日に2時間の講義と自習。1年間受講した。 その中で、講師を務めるベテラン記者に一貫してしつこく指導されたのが「文章は下から目線で書け」ということだった。 物書きはサービス業であり、読者はお客様。気持ちよく読んでもらうことが顧客満足なのだから、書き手は常に下でなければならない、と先生は声を枯らしていた。 確かに、苦労して取材した自分しか知りえない情報を文字にすると、「こんなこと知らないでしょ」というドヤ顔的文章になってしまい、読者は引くのである。 同じようなことを、ある有名な作家が語っていた。 「アマチュアの文章は、どんなに上手くても上から目線で書いているからすぐにわかる。こういう文章は売れない」 自身も、仕事でプレゼンやレクチャーをする時、上から目線になっていないかと反省。上から説得するのではなく、下から納得してもらわなければ商品は売れない。 この考え方、夫婦間のコミュニケーションでも通用するらしい。 英国の研究者が数百組の夫婦に30分間個室で会話をさせ、その様子をビデオに撮って解析したところ、ケンカになる夫婦の会話は必ず夫が上から目線で問題解決型の受け答えをしていたらしい。 「今日ねぇ、お隣の洗濯物が庭に飛んできて大変だったのよぉ」 「原因はなに?対策は打ったの?この話の結論は?」 必要なのは問題解決ではなく、会話そのもの。模範解答はこんな感じ。 「へぇ〜、そうなの。大変だったね」 文章も仕事も会話も、下から目線に越したことはない。 ================================================================ 奥様に結論先出し話法を求めてはいけません。
|
column menu
|