513.2日目のカレー(2011.3.28掲載)
神田はカレーが愉しめる街である。 JR神田駅の西には日本式カレーの頂点「ルー・ド・メール」が店を構える。数多くの雑誌やグルメ番組でランキング1位に輝く「特製ビーフカレー」を食べると、食品の開発に携わる人間なら必ず「なるほど、そういうことか」と唸る。 東に行けば、インド料理の繁盛店「サモサ」。意外なことに、ガーリックナン+インドカレーの組み合わせが最も合う食シーンは、「飲み会帰りの締め」である。泥酔満腹状態でも、インドカレーならパクつける。 これに「神田まつや」のカレーうどんが加わるわけで、神田界隈は、カレー好きがハシゴするにはうってつけの街なのだ。 日本人のカレー好きは筋金入りである。 老人介護施設の入居者を対象に好きな夕食メニューのアンケートを取ると、たいてい1位はカレーだという。それは、カレーが一家団らんの象徴だから。あの日のカレーが家族の笑顔と共にあったから。 洋食嫌いだった我が実家の祖父母も、カレーは喜んで食べた。ただし、普通のお茶碗に盛り付け、箸で食べるという変な条件付きではあったが。 今思えば、実家のカレーは特別おいしいものではなかったが、その日は必ず家族全員揃って食卓を囲み、台所には私と同年代のカレールウたちが並んだ。グリコワンタッチカレー1960年発売、ハウスバーモントカレー1963年発売。特製ヱスビーカレー1964年発売。 各社販促には工夫を凝らしていた。「がっちり買いまショウ」のスポンサーになったり、リンゴと蜂蜜にヒデキが感激したり、インド人がびっくりしたり。 しかし、カレーのおいしさは、なんといっても2日目のカレーである。味覚センサーという分析機器を使用すると、2日目のカレーにはジャガイモのでんぷん質が溶け出したことに由来するコク味が多いことがわかる。そしてそれはどのメーカーのルウを使用しても同じ傾向。 もちろん、センサーで検出されない団らんのおいしさも、2日目のカレーには含まれているに違いない。 前述の「ルー・ド・メール」のカレーを食べて開発マンが唸る理由…。 それは、特製ビーフカレーの味が、紛れもなく2日目の味だからなのである。 ================================================================ 味覚センサーは、インセント社製の分析機器です。
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