514.昔話のメタファー(2011.4.4掲載)
昔話にはメタファー(暗喩)がある。 そして、そのメタファーは昔話が読まれる時代背景に応じて変化し、ある種の行動指針となって世迷い人を救済する。そこで小生、3つの昔話の平成版解釈を作成し、悩み多き高校生の共感を得られるかどうか、恩師に頼んで授業で使ってもらうことにした。 第1話「ウサギとカメは、自己啓発セミナー系のポジティブな昔話だった」 徒競走でウサギがカメに負けたのは余裕をかまして居眠りしてしまったからで、コツコツ努力すればのろまなカメも報われるというのが一般的な解釈。しかし、気合いと竹やりで米軍に大敗した過ちを思い出してほしい。 ここで大事なのは目標設定の違い。ウサギの目標はカメに勝つこと、カメの目標はゴールすること。ライバルばかり見ていると、ゴールを見失うのだ。 メタファーその1…成功のカギは正しい目標設定。 第2話「鶴の恩返しは、恋愛地獄絵図系のネガティブな昔話だった」 あれだけ部屋を見てはいけないと注意されていたのに、主人公は鶴が反物を織る姿を覗いてしまい、幸せは終焉する。 ここでのポイントは覗いてはいけないというルールを守れるかどうか。そう、覗いてしまった機織りの部屋=ケータイなのである。 メタファーその2…ケータイの中に幸せはない。 第3話「浦島太郎は、想い出を大切にするセンチメンタルな昔話だった」 心のアルバムにしまってある初恋の人はいつまでも美しく、ある意味永遠の恋人=竜宮城の乙姫様。その姫が開けてはいけない玉手箱をなぜお土産に渡したのかを考えれば、この昔話の謎は解ける。 つまり、初恋の人を美しいままアルバムにしまっておくのか、あるいは残酷な現実をそのアルバムに上書きするのかの判断を、姫は男性に委ねたのである。初恋の人をなんとか探し出して歓びのご対面=玉手箱を開けて煙もくもく。煙を浴びて男性は老人になってしまうが、恋人もまた然り。時間は平等なのだ。 メタファーその3…現実世界に永遠はない。 以上3つの平成昔話を高校生に聞かせた結果は…。 ウサギとカメはウケたが、鶴の恩返しと浦島太郎は大半の生徒がその昔話自体を知らなかった。時代は変わったのだ。 ちょっとだけ玉手箱の煙を浴びてしまったような年度初めなのである。 ================================================================ 平成生まれは古典的な昔話を知らなかったのです。
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