516.禁句(2011.4.18掲載)
今回の東日本大震災で東北地方に勤務する多くの同僚が被災し、その後、無事再会した時には避難所生活の辛苦をリアルな体験談として聞くことができた。 しかし、どういう風に励ませばいいのか、なかなか言葉が出てこない。諏訪中央病院鎌田實先生の名著「がんばらない」を精読した成果で「がんばろう」が禁句であることはわかっているつもりだが、それ以外にもよくない言葉があるに違いない。 そこで、兵庫県こころのケアセンターのホームページに掲載されている「サイコロジカル・ファーストエイド実施の手引き第2版(アメリカ国立PTSDセンター)」を閲覧し、言ってはいけないこと(Don‘t say)を学習した。これまで励ますつもりで使ってきたフレーズが、かなり含まれていた。以下抜粋。 「お気持ちはわかります」「きっと、これが最善だったのです」「あなたにはこれに対処する力があります」「我々は生き延びたことによって、もっとたくましくなるでしょう」「そのうち楽になりますよ」「できるだけのことはやったのです」「悲しまなくてはいけません」「あなたが生きていてよかった」「耐えられないようなことは、起こらないものです」 安易な慰めはマイナスになる。とにかく黙って体験談に耳を傾けるしかないのである。 被災者に対する禁句に比べれば、ほんとうにどうでもいいレベルだとは思うが、食品の開発担当者に対しても使うと逆にへこんでしまう励まし言葉がある。 「時代を先取りしすぎただけです。数年後に発売すれば、必ず売れますよ」…今の時代が読めなかった愚かさを痛感し、さらにへこむ。 「100円だったら売れるのに」…原価30円で納得できる商品が作れるわけがないと反発。 「取引先から、ぜひ売ってくれと言われるような商品があればいいですね」…そんな商品があれば営業マン不要ですね。 人を慰め励まし、明日に向かって勇気づけることは本当に難しい。 聞き上手が慰め上手。 被災者とヒット商品不発の開発員の悩みを、もっと聞かなければと思った次第である。 ================================================================ 鎌田實著「がんばらない」は、医療従事者の必読書です。
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