534.繁盛店調査(2011.8.29掲載)
繁盛店調査(通称:MR)は、加工食品や外食、中食メニューの開発に携わる者にとっての必須業務。いわゆる食べ歩きである。 ただ、気ままなブロガーがグルメガイドを更新するのとはわけが違う。 顧客から指定された5、6軒の繁盛店を1日で回り、味を体感し、麺類ならつゆを拝借して翌日ラボで再現。工場での生産性と末端価格をすり合わせた後、データと共に翌々日に第1回目のプレゼンというタイトな行程なのだ。 そして、味を参考にさせてもらう繁盛店に敬意を表し、注文したメニューは必ず完食するというのがMRのルール。だから1日に5、6軒は相当きつい。「おいしいけど苦しい」いや、「おいしいかどうかわからなくなるほど苦しい」仕事なのである。 まったく異なる業界で、似たような「気持ちいいけど苦しい」繁盛店調査をしている人がいた。株式会社バスクリンの入浴剤開発者、杉浦氏である。 杉浦氏は全国各地の繁盛温泉を訪ね、源泉に浸かって色、香り、湯ざわりを確認し、ラボに戻って粉末のブレンドでそれを再現する。ちなみに、食品でいうと「食感」に相当する「湯ざわり」は、湯の中で左右の手首をこすり合わせるとわかりやすいらしい。温泉で手首を重ねている人がいれば、それは調査員ということかな。 泉質を参考にさせてもらう温泉に敬意を表し、どっぷり浸かって芯まで温まるのがルールかと思いきや、「あまり長く入ると脱脂されるし、のぼせるから」という理由で、杉浦氏の繁盛温泉調査は1ヶ所につき5分。1日に10ヶ所を回るというから仕方ないか。 そして小生、本日の調査メニューである「深川丼」を5店舗完食。かなりきつい。アサリが口から出てきそうな感じである。もちろん、味の傾向は完璧に舌に刻んだが、もうアサリは見たくない。 杉浦氏を見習って、1ヶ所につき5分間だけ食べるルールに変更しようかと思った、昼下がりの深川宿なのである。 ================================================================ 入浴剤情報の出典は、「Fole」2011年6月号です。
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