535.どう説明する(2011.9.5掲載)
日経メディカル2011年8月号に、「放射線リスクをどう説明する」という記事があった。外来患者から「汚染牛肉を食べたかもしれないが大丈夫か」と聞かれた場合、医師はどう答えるべきかという内容である。 結論として、「微量の放射線をむやみに恐れるよりも、生活習慣の是正を心掛ける方がよほどリスク低減に役立つ」と説明してはどうかと結ばれていた。 明快な回答だが、この結論に至るまでの経緯はかなり複雑である。順を追って解説する。 その1.まず、放射性物質が放射線を出す能力の単位であるベクレルを、人体への影響度合いを表す単位、シーベルトに換算する。例えばセシウム137濃度が4000ベクレル/kgの牛肉を年間10kg食べた場合、4000×1.3(成人、セシウム137の場合)÷100000=0.52ミリシーベルトとなる。 その2.日本で自然界から受ける放射線量は、平常時年間1.48ミリシーベルトだが、福島市の7月中旬の数値、1.3マイクロシーベルト/時だと、年間6.83ミリシーベルトになる。 その3.上記の牛肉と大気で年間7.35ミリシーベルトだが、健康への影響が出るのは100ミリシーベルト以上とされている。ちなみに30歳の日本人の生涯癌死亡リスクは20%であるが、これが年間100ミリシーベルトの被爆で20.5%になるらしい。 その4.そして生活習慣との比較。固形癌の発生リスクで比較すると、喫煙や大量の飲酒は1000〜2000ミリシーベルト、運動不足や肥満(BMI30以上)、やせ(同19未満)は200〜500ミリシーベルト、野菜不足や受動喫煙は100〜200ミリシーベルトの放射線を一度に浴びた状態に相当する。 ということで冒頭の結論が導かれたわけだが、逆に生活習慣リスクの高さに驚いた。 放射線量を気にする前に、野菜摂取と運動不足解消を肝に銘じた次第である。 ================================================================ 放射線のリスク算出には、広島、長崎の被爆データが生かされています。
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