536.大江戸外食事情(2011.9.12掲載)
東京には飲食店が多い。総務省の統計によると、飲み屋を除く飲食店の数は都内に56850軒で、全国総数の13.7%。ちなみに愛媛県は4609軒で、わずか1.1%(2006年)。 人口10万人あたりの軒数に換算した場合、東京463軒、愛媛310軒となるから、ただ人が多いというだけでは説明がつかない。 考えられる理由は3つ。花の都だから、単身世帯が多いから、東京人は気前がいいから。 単身世帯比率を比較すると、愛媛の28.7%に対し、東京は42.5%。ひとり者が4割もいるのだから、どうしても受け皿が必要になるのだ。そして気前がいいというより、東京にいると消費しなければ損するような感覚に襲われる。貯蓄が罪悪のような変な感じ。 このような外食事情は江戸時代も同じだったらしい。 世界最大の都市だった江戸は参勤交代の武士や出稼ぎの地方出身者が多く、単身世帯比率が高かった。そして、宵越しの金を持たない空気が町を包み、人々はすすんで外食を愉しんだ。 「町内に半分の余は喰物屋なり。予が三都の見立に食の第一に見立てしが、中々食物是程に自在なる所は見ぬ。唐土にもあるまじく思はるる也(西沢一鳳著『皇都午睡』)」 …町じゅうが飲食店だらけで、好きなように何でも食べられる。こんな所は外国にもないだろう。 「江戸ものの生まれそこない金をため(『誹風柳多留』11篇)」 …まともに生まれた「江戸もの」なら、入った金は右から左へ使ってしまう。 そんな江戸時代、飲食店の価格帯はどうだったのか。 高級料亭で芸者さんを呼んで食事をすると1両(6万円)。屋台のにぎり寿司が1個8文(80円)。かけ蕎麦1杯が16文(160円)。居酒屋で酒3本に肴2皿で50文(500円)。 軽く食べる分には安いが、色気を出すと高くつく。 この辺の事情も現代と同じなのである。 ================================================================ 江戸外食情報の出典は、小学館「落語昭和の名人完結編10」です。
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