541.倹約(2011.10.17掲載)
地味で質素な経営トップの場合、そのコストダウン体質は無意識のうちに社員に浸透し、堅実な企業体質が形成される。 対して派手なトップは放漫経営という危うさがちらつく反面、「頑張って働いてああなりたい」というキャリアターゲットとして君臨し、社員のモチベーション向上の一助となる。 両タイプ共に一長一短あるが、大恐慌時代の食品業界は迷わず前者を選択すべきだろう。そして、地味トップの象徴として君臨する日本人が、来年没後190年を迎える上杉鷹山である。 故ケネディ大統領をして「最も尊敬する政治家の一人」と言わしめた名君は、破産同然の米沢藩上杉家に養子に入り、一人の藩士もリストラすることなく藩財政を立て直したのだ。 その手法は徹底した率先垂範。朝食は茶漬け飯と香の物、焼き味噌、梅干し。夕食は一汁一菜。とにかく徹底して倹約した。その後、50人いた奥女中を9人に減らし、藩主の生活費を1500両(9000万円)から209両(1254万円)に減額した。 そんな粗食が奏功して72歳まで長生きしたというオマケもついたが、17歳で藩主になってから55年。さぞかし固い体質になったに違いない。やはりトップの地味姿勢は組織の浮沈に関わってくるのである。 話は変わるが、小生の尊敬する経営者(故人)にも秀逸の倹約話がある。出張で利用するため船着き場で乗船券を求めた時のエピソード。 発券係「1等〜4等までどれになさいますか?」 経営者「どれが一番早く着くのだ?」 発券係「どれも到着時間は同じです(笑)」 経営者「じゃ、5等をくれ」 倹約もここまで極めれば、突き抜けて新しいビジネスの後光が射しそうな気配である。 「業績は体質の結果である」というビジネスセオリー。組織でも個人でも当てはまる名言だと思った。 ================================================================ 上杉鷹山情報の出典は、「おたふく」2011年第45号です。
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