544.食シーン(2011.11.7掲載)
加工食品の商品コンセプトを考える場合、外せないのが売場イメージ、売価設定、ターゲット、食シーンである。 「鮮魚コーナーに煮魚のタレを100円で並べ、子供に魚を食べさせたい30代主婦層を狙い、週末の一家団らんをサポートする」 こんな感じであるが、ここで最も難しいのが食シーンの提案。各家庭の事情や時代背景が複雑に絡んでくるから、必ずしもメーカーの思いが伝わるとは限らない。そこでCMの出番である。 日本で最初にCMと連動した食シーンの提案を行ったのは、グリコの「ポッキー」といわれている。昭和50年代前半にお茶の間を席巻した「ポッキー・オン・ザ・ロック」と「旅にポッキー」である。 札幌のバーで、ポッキーをマドラー代わりにしてウイスキーを混ぜる客を見てひらめいた「ポッキー・オン・ザ・ロック」だが、昼間のホームパーティー風のCMが浸透し、お誕生日会の定番となった。そして松田聖子が「旅にポッキー」を持っていくものだから、遠足のおやつがポッキー一色になった。 さすがCMの力はすごい。すごいから年々規制や批評が厳しくなり、食シーンの表現も窮屈になった。 例えば日本コカ・コーラの「からだ巡茶」。広末涼子が巡茶をさわやかに飲む食シーンはよかったのだが、「広末涼子、浄化計画。」というコピーが老廃物除去という医薬品の効能のように受け止められる可能性があり、「気分浄々」に差し替えられた。 そして、アサヒビールの「くつろぎ仕込」。家飲みのくつろぎが十分に伝わる内容だったのに、北川景子の膝枕姿が「ハレンチ」だとの婦人団体の抗議を受け中止となった。 つまらない世の中である。 まあ、薬事法をきっちり守り、CMで断崖絶壁を登り切った後に商品を飲み干し、効能は「疲労回復」であって「疲労の予防」でないことを正確に伝える「リポビタンD」の事例もあるのだから、規制の範囲で知恵を絞るしかない。 逆に、批判を浴びる程の強烈な食シーンを考えなければ、ヒットは生み出せないのかもしれないと思った。 ================================================================ グリコのポッキーは昭和43年生まれです。
|
column menu
|