547.昆虫衣食住(2011.11.28掲載)
昆虫は地球上の動物の中で最も繁栄しているグループであり、名前が付いているものだけでもその種は約100万。だから、身近に多くの昆虫が居て人との関わりも深い。 しかし、その扱いは多くの場合「害虫」である。 昭和天皇が「雑草という名の植物はない」とおっしゃったように、「害虫という名の昆虫はいない」わけで、最近、昆虫の持つ多様な特異能力を積極的に利用する試みが進んでいる。 衣食住における昆虫の活用例をまとめてみた。ただし、ここでの「住」は医療関係の事例とする。 「衣」 紀元前3000年の中国にまでさかのぼる活用事例が、ご存知カイコによる絹の生産。1個の繭から約1000mの糸が取れるのだから、天の虫という名とシルクロードの発展に異論はない。 「食」 食品業界への貢献度No1昆虫といえば、やはりミツバチである。蜂蜜の生産はもちろん、ハウス栽培のトマトやイチゴの花粉媒介でも大活躍。だから、昨今のミツバチ大量失踪は大事件であり、アインシュタイン博士の「もしハチがが地球上からいなくなると、人間は4年以上生きられない」という予言が現実味を帯びてきた。 変わり種はサボテンに寄生するエンジ虫。乾燥させたエンジ虫からコチニールという赤色の色素が抽出でき、古くはインディアンのフェイスペイント、現代では食品添加物として使用されている。 「住(医療)」 第一次大戦後に研究が進んだ、壊死した組織をハエの幼虫(蛆)に食べさせる治療法が見直されている。無菌的に繁殖させたヒロズキンバエの幼虫数匹を潰瘍組織に放すと、幼虫が分泌する消化液の効果で治癒が促進されるのだ。 そして再びカイコ登場。医薬品開発における動物実験の代役として、カイコが活躍している。例えばブドウ糖の注射で高血糖状態にすると発育阻害が起き、インシュリン注射で治療できたりするらしい。 成功した理系の研究者の多くが、幼少期に昆虫採集にはまった経験を語っている。となると、昆虫は衣食住+進路にまで関わっていることになる。 どんな虫も害虫呼ばわりしてはいけないと思うのである。 ================================================================ 昆虫情報の出典は、ブレインテクノニュース2011年第147号です。
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