571.アニメとお見合い(2012.5.28掲載)
暗い、わかりにくいと酷評され続けている大河ドラマ「平清盛」であるが、食事のシーンが少ないことも視聴率低迷の一因ではないかと思う。 ドラマにおける食事シーンは、時代背景や経済状況を伝えるための重要なメッセージアイテムであり、登場人物のキャラクターに親しみを持ってもらうための身近な小道具でもある。 例えば2002年の大河ドラマ「利家とまつ」では、まつの作った味噌汁を利家が囲炉裏端でおいしそうに飲み干すシーンが多用され、夫婦の関係性を表現する起点となった。 また、2004年の大河ドラマ「新選組!」では、近藤勇がテーブルでワインを飲むシーンが印象に残っている。武士よりも武士らしく生きようとした近藤勇の俗物的な側面と、西洋文化が浸透し始めた当時の世相をうまく伝えていた。 最近DVDで見た映画でも心に残る食事シーンがいくつかあった。2003年公開の「グッバイ、レーニン」では、東ドイツに忠誠を尽くす病床の母親にベルリンの壁崩壊を知らせまいと、息子が奔走して手に入れた東ドイツ製のピクルスがほのぼのとしていた。 また、2010年公開の「武士の家計簿」では、息子の嫁が作った「里いもとタコの煮物」を、奥方がほんとうにおいしそうに食べていた。 ところで、大河ドラマや映画以上に食事シーンが重要となる事例が2つある。それは、アニメとお見合い。 非日常的になりがちなアニメの主人公が食事をすることで、生身の人間としての日常感が付与できる。そして、食事という日常感をチェックして相手の性格や人となりを判断するのがお見合い。食べ方に品が無いと「お里が知れる」ということになってしまうのだ。 最後に、「平清盛」復活のための提案。 天皇家、平氏、源氏という三者三様の食事シーンが劇中で演出できれば、視聴率も上向くのではないか。栄養に偏りのある貴族化した食生活が平氏滅亡の主要因だったといわれるだけに、食事シーンは外せないと思うのである。 ================================================================ 映画情報の出典は、「おたふく」2012年春号です。
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