574.納得力(2012.6.18掲載)
自社商品を採用してもらうためのプレゼンテーションで最も大切なことは、顧客を「説得」して買わせるのではなく、「納得」して買ってもらうことである。 説得と納得、この差は大きい。説得で決めた商談は、その場の熱が冷めた時にキャンセルを食らうことが多いし、話がうますぎて顧客側に「だまされた感」が発生することもある。 だから、美容業界でトップセールスを張っていた知人は、プレゼン時に商品購入のリスクを強調し、キャンセル率の低減に成功した。まさに、説得から納得へとプレゼンのスタンスを変えたのである。 ちなみに、納得モデルの典型はテレビショッピングである。画面の中のプレゼンターは商品の良さを消費者目線でアピールするが、決して「買ってください」とは言わない。視聴者は、納得して自らの手でフリーダイヤルとつながるのだ。 みずほ銀行発行の情報誌でも、同様の消費動向を特集していた。タイトルは、「不況でも『納得』すれば高いモノが売れる」。 取り上げられていた高額商品を紹介する。 資生堂の美容クリーム「クレームシネルジック」12万6,000円…資生堂14年の基礎研究の結果、リンパ管機能の低下がしわの形成につながることを突き止め、これを防ぐ美容成分を商品に込めた。だから高いのだが、30代後半〜40代のキャリア女性と60代前後のシニア富裕層の支持を受け、けっこう売れている。 ダイソンの扇風機「エアマルチプライヤー」5万4,000円…ご存知羽根のない扇風機。扇風機としては高額だが、小さな子供がいる20〜30代世帯を中心に売れ、2011年の上半期に最も売れた扇風機となった。 AKGのイヤホン「K3003」13万8,000円…イヤホンにしてはかなり高額だが、日本の音響マニアの底力はすごい。スピーカーケープルに100万円かけることを考えると、この程度はチョロいのだ。世代を問わず、生活を切り詰めて趣味に走るオタクに勝る顧客はいない。 景気回復のためには、「納得力」のある商品とトークが欠かせないのである。 ================================================================ 高額商品情報の出典は、「Fole」2012年6月号です。
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