575.在庫の達人(2012.6.25掲載)
中小企業庁の調べによると、国内小売業の商品在庫期間は平均で26.4日と報告されている。小売業にとって、在庫圧縮は常に頭を悩ませる大命題である。 当然、在庫を減らして在庫期間の短縮ができれば資金繰りがよくなり、経営が健全化する。「企業は利益が出なくても倒産しないが、現金が無くなれば倒産してしまう」という経営のセオリーを考えれば、「動かない在庫」は悪なのだ。 しかし、在庫を気にするあまり商品を切らしてしまったのでは身も蓋もなく、これまた「欠品は売場の恥」という常套句が頭をよぎる。 そこで登場するのがPOSデータを利用する発注管理。過去の売上データから今後の売れ筋を予測し、平均気温や天気予報、イベント情報を絡めて最適な品揃えを最小の在庫で実現する。 その成功事例がコンビニであることは周知の事実である。1日1000人の来客に対して4000アイテムを無駄なく提供し、60万円を売り上げるビジネスモデルは在庫管理の教科書ともいえる。 しかし、である。先日、その上を行く強者に出会ってしまった。東北新幹線郡山駅上りホームの売店である。 6月某日、台風4号北上の最中、19時49分仙台発はやぶさ6号で東京へ向かう。20時30分、突然郡山駅で停車。「小山駅で停電につき、しばらく停車します」。21時30分、「強風で復旧作業が難航しております」。22時30分、「まだ見通しが立たないためドアを開けます。駅ホームをご利用ください」。 ここで驚きの光景。ホームの売店が酒類とおつまみを山積みにしていて、そこにおっさん長蛇の列。たった1人の店員さんが次々と客をさばく。新幹線缶詰状態ですることといえば宴会しか無く、この状況に即対応したのだ。レジもPOSもなく400アイテムが限界の売店で、しかも、通常なら終電の終わった22時30分に宴会アイテムの完璧な品揃え。 まさに、「企業とは変化に即応する集団」を実践していた小さなお店に敬意を表しつつ、その後も缶詰に耐えた。 25時30分、東京駅着。自身も変化に対応して車両で野宿。在庫の達人のおかげで、4時間遅れが苦にならなかった台風一過なのである。 ================================================================ POSの和訳は、「販売時点情報管理」です。
|
column menu
|