579.シニア元年(2012.7.23掲載)
前号のコラム「瑛太先生」で、小学生に対するかつお節の出前授業をレポートしたが、今度は団塊世代の65歳を対象とした食文化講座の打診があった。 実体験として食事の準備にかつお節を削っていた先達に対し、食文化講座など釈迦に説法の極みであり超おこがましい。丁重にお断りした。 65歳以上が人口の23%を超え、個人消費の4割以上が60歳以上によると推測される今日、団塊世代を対象としたビジネスが活気づくのは仕方のないことかもしれない。 シニアマーケット、団塊商戦、アクティブシニア、シルバー消費等のキーワードが飛び交っているが、よくよく考えてみると、以前にもこんな盛り上がりがあったぞ。 そう、それは団塊世代が60歳を迎えた2007年。リタイア層を取り込もうと市場は活況を呈していた。退職金による資金運用、高齢者向けマンション、世界一周クルーズ、高齢者向けジム、アンチエイジング、シニアファッション等々。 しかし、笛吹けど踊らず。5年前のシニア戦略は完全な空振りだった。その原因として次の3つの要因が考えられる。 1.団塊世代の多くが再雇用され、リタイア生活に入らなかった。 2.高齢者=高資産者というイメージから高額消費を想定したが、実際は老後の不安から財布のひもが固かった(日本の貯蓄の62.4%が60歳以上の資産)。 3.従来のステレオタイプの高齢者像から脱却できず、適切な商品やサービスを提供できなかった。 これらの反省をふまえて仕切り直しするシニア元年が2012年なのである。 各社2007年の轍は踏むまいと市場調査を重ね、ある大手量販店はシニアという呼称をやめ、「グランド・ジェネレーション」なる造語をひねり出した。また、低カロリー、減塩などの食品を前面に出す量販店もある。 まぁ、あまり周囲が盛り上がりすぎるとヘソを曲げる可能性もあるわけで、自身の力で競争を勝ち抜き、人生を切り拓いてきた団塊世代の消費行動を総論で語るのはかなり難しいことだと思う。 お孫さんのために消費しましょう、という殺し文句で十分ではないだろうか。
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