580.モノラック(2012.7.30掲載)
私が尊敬する某上場企業の社長は、「変化への対応と基本の徹底」という言葉を常に社員に刷り込んでいる。 当たり前のことだがこれがなかなか難しい。現状維持が何より楽だし、慣れてくると基本がおろそかになる。だから社風となるまで念仏のごとくに繰り返し、成功の原動力となった。 この社長が率いるのは大企業だが、売上5.5億円ながら「変化への対応と基本の徹底」で成功し続けている米山工業という会社が愛媛にはある。 幼時、テレビから繰り返し流れていた「らくらくラック モノラック〜 モノラックの米山工業」というご当地CMが今でも耳に焼き付いて離れない。「モノラック」は、山の斜面のみかん畑を縦走する物資運搬のモノレールなのだ。 CMが流れていた昭和47年、全国のみかん生産量は357万トンで、そのうちの17%を愛媛県が占めていた。瀬戸内のみかん畑は段々畑。重い肥料や収穫したみかんを担いで急斜面を登り下りする辛苦から解放されるのだから、みかん農家はモノラックの登場に歓喜した。 しかし、その後みかんの生産量は減少し続け、平成22年には全国生産量が79万トンにまで落ち込む。米山工業はこの凋落を予測して変化に対応。林業従事者向けの木材運搬装置「ツリーラック」を発売した。 大方の予想通り、林業も斜陽につき即次の一手を打ち、地下鉄工事現場用に「モグラック」を発売。地下深くまで安全に建設資材を運搬できるようになった。 まだまだ変化に対応する。 最新の商品が、橋やビルの建設現場に欠かせない「ラック足場」。建造物の下部に取り付けた2本のレールを軌道とする吊り足場で、従来の足場に比べ短期間、低コストでの設置が可能となった。 日本には40万もの橋があるが、コストの問題で点検が先送りされているケースが多い。ラック足場の出番なのだ。 農業→林業→建設業と変化に対応しつつ、安心安全のモノラック技術という基本を徹底的に磨く。 みかんが売れなくなったと嘆くJAにも学んでほしい姿勢である。
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