588.かずきとはるま(2012.10.1掲載)
かずき(和樹)とはるま(春馬)は、近所に住む一卵性双生児である。 地元の同じ国立大学に通う二人は、今年二十歳になった。幼稚園、小、中、高校も同じで、20年間実家から通学している。 さらに、高校時代の部活も塾も同じで、共に南向きの6畳間という自室の間取りまで同じ。 しかし、不思議なことに兄弟の性格は全く異なっている。外見で見分けが付かなくても、その行動を聞いただけでどちらがやらかしたことか、即座にわかる。一言で集約すれば、かずきはきつく、はるまは穏やか。「同じように育てたのに」という両親の嘆きも納得の違いなのである。 このような一卵性双生児の個性に関し、米国ソーク研究所のゲージ博士らが最新の研究成果を報告している。 それは、「遺伝子のジャンプが性格の違いをもたらす」というもの。神経細胞の中で遺伝子が「コピー」と「ペースト」を繰り返しながら動き回り、脳の働き方を変えているというのだ。 驚きのジャンピング遺伝子であるが、本来の目的は変化への対応。急激な環境変化に迅速対応する人体の機能が、平和な時代に性格を操作したことになる。 ここで私は、名前の響きが性格に影響したという仮説を追加提案したい。「かずき」と「はるま」では音の響きが全く異なる。きつい感じの音である、カ行、サ行、タ行が多く含まれる名前は音がきつく、長年その音を聞き続けた本人の性格もきつくなるという仮説である。 だから、ハ行、マ行、ラ行という穏やかな音からなる「はるま」の性格が穏やかになったのだ。 ジャンピング遺伝子のせいか、名前のせいか。 今後も、かずきとはるまの成長を温かく見守っていきたいと思うのである。
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