590.ドーピング考(2012.10.15掲載)
陸上競技で国体を目指す知人が、「ドーピング規約が厳しくて、健康食品に手が出せない」とぼやいていた。 確かに、医薬品に比べて製造・販売の規制が甘い健康食品は、成分表示にない物質が含まれている場合が多いし、天然物由来の成分だと含有物質自体よくわかっていないので怖い。 その他、知人が教えてくれた「うっかりドーピング」回避術をいくつか紹介する。 麻黄を含む漢方薬はエフェドリンが存在するため服用しない。便秘薬「コッコアポA錠」も、カタカナ表記ながら漢方薬でエフェドリンを含み、使用禁止。 「パブロン鼻炎カプセルZ」は使用可能だが、「パブロン鼻炎カプセルS」にはプソイドエフェドリンが含まれており禁止。末尾記号の違いや「顆粒」と「錠」の違いで成分が変わるので注意。 内服薬の発毛剤は問題ないが、塗り薬の「ミクロゲンパスタ」にはテストステロンが含まれており、使用禁止。知人は毛がふさふさで安心。 こんな感じの禁則が山積みらしいのだが、そもそものアンチドーピングの主旨は「公平な勝負」と「心身の健康」。この原則を徹底するためにも「うっかりドーピング」をなくすことが必要なのだ。 ところで、ドーピングに関して米国のジャーナリストがある疑問を投げかけている。それは、「腕のいい外科医がプロ野球選手に施す靱帯再建手術は、なぜおとがめなしなのか?」。化学反応で筋肉を増強するステロイド剤がダメで、外科手術で筋肉をつなぐ肉体改造がOKなのは解せないと。 当然のように出てくる「外科手術は選手の体を自然な元の状態に戻すだけであり、運動能力を高めているのではない」という反論は、「負荷がかかると故障をする方が自然だ」と切り捨てる。 ディベートのネタになりそうだが、この議論に勝つためのヒントをひとつ。水島新司先生の漫画「あぶさん」の主人公景浦安武は、酩酊状態でこそ実力を発揮する酒豪の強打者。べろべろでホームラン。だから大人気。 そう。ドーピング規約でアルコールは禁止されていないのである。
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