591.プラゴミ(2012.10.22掲載)
以前、「高校生以外のためのまる裏俳句甲子園」に、拙作「アメンボの宿水たまり消えるまで」を投句したことがあった。 数時間後にはなくなってしまう水たまりを優雅に駆けるアメンボの刹那。一瞬を切り取ったつもりの自信作だったが、あっけなく落選した。 こんな情緒と対極にあるアメンボの一種、「コガタウミアメンボ」が環境系の論文に登場して話題になっている。なんとこのアメンボ、一生を海の上で過ごし、浮遊するプラスチックゴミの表面に産卵するのである。 米国スクリプス海洋研究所の報告によると、「北太平洋亜熱帯循環域」という海域で過去40年間にプラスチックの浮遊物が100倍に増え、コガタウミアメンボの卵も増えているというのだ。 歴史的に見れば北太平洋にプラゴミが漂うことなどなく、ウミアメンボは鳥の羽や流木に産卵していたはず。それが今日のプラゴミ増加で、生態系が変わるのではないかと研究者は懸念する。 話は変わるが、以前、読売新聞のネット投稿で「プラゴミを分別出来ない夫に悩んでいます」という記事を見たことがあった。「何度注意しても分別できず理解に苦しむ。夫の気持ちがわかる方、解決のアイディアをお持ちの方、アドバイスをよろしくお願いします」という内容だった。 なんとも切ない。たぶんこの夫君、昼間はバリバリ働く優秀なビジネスマンに違いない。ゴミの分別どころではないほど疲れ切って帰宅しているに違いない。間違えたっていいじゃないか。解決しなくていいじゃないか。 プラゴミのせいで生態系が変わりそうなのは、北太平洋だけではないようだ。 第21回(平成20年)のサラリーマン川柳入選作、「ゴミだし日すてにいかねばすてられる」が頭をよぎるのであった。
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