593.一刻の愉しみ(2012.11.5掲載)
音楽CD収録時間の世界基準を決める際、60分間を主張するフィリップス社に対し、ソニーの大賀典雄氏が「ベートーベンの第九が入る75分間」を譲らず現在の規格になった話は有名である。 確かに、スピード優先の現代における時間単位は1日を24等分した1時間だが、たいした娯楽もなく、時間がゆっくり流れていた頃はそれでは短かったに違いない。 むかしは、2時間がひとつの時間単位ではなかったか。江戸時代の一刻が2時間だったように。 だから、音楽やスポーツ等、2時間をひとくくりとする娯楽は多い。 前述の第九だって、年末にコンサートを聴きに行くと30分前後の小曲→15分間の休憩→75分間の第九という流れで計2時間。クラシックに限らず、ロックやポップスのコンサートもだいたい2時間だ。 スポーツの場合、まずマラソンが2時間。プロ野球は最近3時間前後の試合が多いが、7時から始まるナイター中継がほとんど9時終了であることを考えると、2時間が前提ではないか。大相撲の本場所も序の口の開始は午前8時半だが、幕内力士が登場する午後4時からの2時間を楽しむのが一般的。 あと、寄席も前座が終わって二つ目から真打までがだいたい2時間。お芝居も2時間、映画も2時間、フランス料理のコースも2時間、居酒屋の飲み放題も2時間、ビジネスマンの接待も1次会2時間+2次会2時間。 ついでに2時間ドラマも2時間…。 では、いかに2時間を安く楽しめるかというコストパフォーマンスはどうか。 もちろん、圧勝はタダで見られる2時間ドラマ。マラソン観戦も沿道ならタダだな。次いで1800円の映画。 だが、おすすめは寄席。2800円でたっぷり話芸を堪能でき、トリの大ネタなんざぁ豪華キャストのお芝居を見たような満足感に浸れるのだ。費用対効果はもの凄く高い。 といいつつ、今夜も楽しくコラムを執筆。構想から清書までしめて2時間。 低コストでたっぷり愉しませてもらえるのも、読者の皆様のおかげなのであります。
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