597.意外なライバル(2012.12.3掲載)
若者が食事にお金をかけなくなって久しく、販売ターゲットを若年層から中高年層に変更することが食品流通業の常となっている。 若年層はコンビニよりドラッグストアを好み、食費を削って携帯電話の支払いを工面する。今や、食品業界のライバルはどこに潜んでいるかわからない乱世なのである。 食品製造の現場においても、しばしば意外なライバルが出現して原材料の奪い合いとなる。 例えば、ちょっと前のバイオエタノール。トウモロコシの発酵によるバイオエタノールの生産が歓迎されたりしたものだから、トウモロコシが食品業界に回らなくなった。結果、トウモロコシでんぷんを原料とする調味料や糖類が高騰。バイオエタノールと縁の薄い国内では、ピンとこないライバルだった。 たしかに、エネルギー市場は手強い。最近だとシェールガスの掘削にグアーガムという増粘剤が使用されるようになり、価格が15倍に高騰した。環境に配慮する米国では、天然の増粘剤を使用することを免罪符に掘削を進めたい思惑もある。エネルギー問題が、増粘剤を配合するアイスクリームやドレッシングの製造コストを上げてしまったのだ。 思惑が外れたライバルもいる。加工食品の包装容器に使用されるポリビニルアルコールという資材は酸素を透過しない特性で品質保持に威力を発揮してきたのだが、ある時、液晶パネル業界から高値オファーを受け、食品業界からの決別を宣言してしまった。 しかし、リーマンショック以降、日本の液晶パネル産業は失速。出戻った食品業界でも居場所がなく、ポリビニルアルコールは苦戦を強いられている。 元来地味な食品業界であるが、シェールガスや液晶パネルなど、時流のキーワードに翻弄されることで変化に敏感になるというメリットもある。 意外なライバルも、時には必要なのかもしれないと思った。
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