605.3つのお願い(2013.2.4掲載)
ものごとの要諦を3つのキーワードに集約するテクニックは、日本人が大好きな表現手法の1つである。3には安定感があるし、長嶋さんの背番号も3だし、毛利元就三本の矢の故事にも説得力がある。 たとえば、牛丼チェーンの「早い」「安い」「旨い」。食品業界でこれを越えるコピーは未だに出現していない。早くて安くて旨いのだから、売れて当然である。 そして、ヒットするドラマの3要素は「主役にライバルがいる」「謎の人物がいる」「主役がピンチに陥る」。これも然り。「白い巨塔」の財前教授には里見教授というライバルがいて、謎の大河内教授が脇を固め、医療ミス疑惑で財前教授がピンチに陥る。 3つのキーワードを嫌というほど浴びるのは、社員研修の座学。できるビジネスマンの3要素…「目配り」「気配り」「心配り」、成功の3要素…「理念」「信念」「執念」、いい会社の3要素…「生産性」「人間性」「社会性」等々。 こんなことを考えながら、フジテレビの情報番組「とくダネ!」で放送された、小倉智昭さんと橋下大阪市長の桜宮高校体育科に関する討論を見た。橋下市長の圧勝に終わった約1時間のディベートだったが、勝てるディベートの3要素がよくわかった。「カマない」「キレない」「ブレない」である。 いかなる質問にもカマずによどみなく即答し、挑発に乗ることなくキレず、主義主張は一貫してブレない。ほれぼれする論客ぶりに、小倉さんの「今日はこのくらいにしておきますが…」という捨てゼリフが花を添えてしまった。 橋下市長には及ばないまでも、3要素を肝に銘じて会議に強くなるディベート力を身につけたい。ただ、現実的にはお願いを3つするのが関の山か。「企画通して下さい」「勘弁して下さい」「よろしくお願いします」。 昭和45年のヒット曲、ちあきなおみの「四つのお願い」を口ずさみながら会議室に向かう、冬の朝なのであった。 「四つのお願い聞いて 聞いてくれたら あなたに私は夢中 恋をしちゃうわ」
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