612.マイクロライフ(2013.3.25掲載)
最近、長寿を目的とした食の健康情報が錯綜し、いささか食傷気味である。 1日1食を勧める先生がいれば、1食だと死にますよと小太りを称賛する先生がいる。長生きしたけりゃ肉を食べない方がいいのか、はたまた肉食礼賛か。 さらに、これらの食情報に加えて喫煙、飲酒、運動等の要因が個人の事情で絡み合うから、一体自分は長寿か短命か、まったくわけがわからない。 そこに現れた救世主が、英ケンブリッジ大学のシュピーゲルホルター教授。教授は、さまざまな生活習慣が寿命に及ぼす統計的なリスクを、「マイクロライフ」という明快な指標に変換した。マイクロライフとは寿命の増減を示す単位で、1マイクロライフ=30分である。 例えば、1日にタバコを2本吸うと1マイクロライフ(30分)寿命が縮まり、20分間運動すると2マイクロライフ(60分)寿命が延びる。他にも、標準体重を5kg超過する状態が1日続くと−1、新鮮な野菜や果物を摂取すると+1、1杯のアルコールは+1で過度のアルコールが−1、2時間座りっぱなしは−1、鶏肉と魚肉以外の肉を85g摂取すると−1等の指標が決められている。 ということは、毎日運動して野菜や果物摂取を心がけていても(+3マイクロライフ)、1日6本のタバコ(−3マイクロライフ)がその努力を帳消しにしてしまうという計算が成り立つのだ。 なるほどわかりやすい。 ならばさらに発展させて、メンタル面の指標も設定してはどうか。 浜松医科大の高田先生は自著「脳から老化を止める」で、「好奇心を持つ」「芸術に触れる」「若い人と触れ合う」等の精神的な老化防止策を提唱しているが、好奇心の赴くままに行動すると+1マイクロライフ、お芝居を1本見ると+2、20代と30分話すと+1てな感じでどうだろう。 そして、食品業界に身を置く者としては、「おいしいものを食べると+3マイクロライフ」という指標の追加もお願いしたい。 そう遠くない将来、「マイクロライフ帳」なる健康手帳が登場する日がやってくるかもしれないのである。
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