613.新・五無主義(2013.4.01掲載)
1980年の日教組教研集会の報告書に「五無生徒」なる単語が登場し、その後「五無主義」という言葉で定着した。無気力、無責任、無関心、無感動、無作法の五無で、全てに対してやる気のない若者を5つの「無い」で括ったのである。 これは、「しらけ世代」「新人類」など、学生運動が終焉を迎えた後に成人した若者を指す言葉とほぼ同義語。 ふと、物欲を喪失してしまった2013年の若者たちのことが頭をよぎった。「クルマを持たない」「新聞を読まない」「読書をしない」「酒を飲まない」「異性にがっつかない」。これぞ現代の五無主義ではないか。 そこで、ジャストシステムが東京、大阪在住の20代の社会人男女800人を対象に行った、「若者の○○離れに関する調査」を参考に、平成の五無主義を検証してみた。 クルマを持たない人…66.9%。持たない理由…バスや電車など他の移動手段で十分45.6%。おいおい、クルマを単なる移動手段と言い放つか。社会人になって最初の自己実現は、給料を貯めて好きなクルマを買うことではないのか。クルマに興味がないから「年収200万円で十分」となり、国家の税収が減少するのだ。 新聞を読まない人…59.9%。読まない理由…ネットで情報入手61.8%、ネットと比べて情報が遅い21.1%。やっぱりネットか。単なる情報だけならネットでいいかもしれないが、新聞には人類が積み重ねてきた文化と叡智が詰まっている。新聞を読まない人間は貧しい文章しか書けないよ。それに、世界中で同時に閲覧できるネット情報が「速い」わけない。 ほとんど読書をしない人…30.8%。読書時間が減少した理由…いそがしい61.2%。ネットなどを見る時間が増えた42.2%。あのね、いそがしい仕事や趣味の合間を縫ってでも読みたくなるのが読書の愉しみなんだ。精神を根本から揺さぶる小説をむさぼるように読んだ経験のない人は哀しい。名作を読み込んだ人の懐の深さは、人生経験の大小では量れない別次元のものである。 ああ、おっさんの説教コラムになってしまった。「酒」と「異性」は次の機会にしよう。 新・五無主義撲滅は、必ずや景気回復につながると信じてやまないのである。
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