616.猿の惑星(2013.4.22掲載)
大阪大学工学部の福住先生が、「科学の研究において『猿の惑星』の教訓を大事にしなければならない」とおっしゃっていた。 ご存知「猿の惑星」は1968年に第1作が公開されたアメリカ映画で、その後第5作まで続編が製作された人気シリーズ。小生も、テレビ放映版を実家の白黒テレビにかぶりついて観た記憶がある。 時は近未来。人類初の恒星間飛行が行われ、その帰還中に宇宙船のトラブルが発生。不時着した場所は、なんとアメリカ英語を話す猿が人間を支配する世界だった…。 そして、有名な最後のシーン。宇宙飛行士が廃墟となった自由の女神にたどり着き、不時着した場所がニューヨークであることを知って愕然とする。 ここで、福住先生がつっこむ。「そもそも最初に猿がアメリカ英語を話した時点で、そこがアメリカであることはわかるはずだ」と。たしかに。 映画の原作はフランス人作家の作品で、猿の星は「惑星ソロール」。話す言葉もソロール語。これが、アメリカ人にかかると宇宙に言語はアメリカ英語しかないと思い込んでいるから、猿がアメリカ英語を話していても場所の特定には至らなかったのである。 つまり福住先生の教訓は、常識や思い込みに囚われるなということ。教科書の記述や過去の定説を越えたところに新発見があるのだから、思い込んだ時点で科学者失格だと猛省。 小生の最近の思い込み事例を紹介する。 脳のエネルギー源はブドウ糖のみだと思い込んでいた→乳酸も脳のエネルギー源になることが発見された。 その乳酸はだしの味をじゃますると思い込んでいた→乳酸はかつおだしの必須要素であることが発見された。 そのカツオは世界の海に無尽蔵にいると思い込んでいた→カツオは貴重な海洋資源であり漁獲規制の対象となってしまった。 あぁ、猿の惑星からカツオの暴騰に話が飛んでしまった。こんなに値上がりしてどうするんだ。ここは、魚の惑星ではなかったのか。 とにかく、資源が無尽蔵などという思い込みは禁物なのである。
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