619.最良の友(2013.5.13掲載)
先日、ペットフードに関するこんなクレームがあった。 「おたくの商品使ってるんだけど、かつお節の骨がウチのワンちゃんに刺さったのよ」 魚ですから骨くらいありますよ、などと言おうものなら炎上必至。よって、「申し訳ございません」と不条理に耐えるのみである。 むかし、ペットの犬は一家の夕飯の残りをまとめて骨ごとガジガジ食べていたのではなかったか。いつから小さな骨にてこずるようになったのか。最良の友として食事を共有していた時代が懐かしい。 ウプサラ大学(スウェーデン)のリンドブラード博士は、この「食事の共有」こそが、犬とオオカミの違いだとネイチャー誌に発表した。 犬はオオカミに比べて体が小さく社交的で攻撃性が低いが、全ての犬はオオカミの子孫だとされている。では、いつ犬はオオカミから離れたのか。DNA研究によると、犬がペットになった時期は約1万年前で、これは人類の農耕のはじまりと同時期。 つまり、麦や稲という農作物の傍らに人間と犬がいて、ともにデンプンを糖に分解して吸収する能力を獲得していった。これを「平行進化」というが、進化を共にしたのだから、これ以上の友情はないだろう。 ちなみに、オオカミはデンプンを消化することができない。 ところで、昭和の食卓に占める炭水化物の割合は今より高く、カロリーベースで昭和21年81%、昭和40年72%。そして、平成17年60%。炭水化物ダイエットが浸透するとさらに減少しそうだが、人間と犬をつないだ栄養素なのだから、共に炭水化物を食べようではないか。 毎年、黄金週間に開催されるペット関連商品の展示会。最近の傾向は、マダムがだっこする犬の大半がサングラスをかけていること。単なるおしゃれなのか紫外線カットなのかは不明だが、「骨が刺さった」と悪態つかれても仕方がない佇まいである。 最良の友を巡るビジネスは、とどまるところを知らないのである。
|
column menu
|