620.効かないサプリ(2013.5.20掲載)
先日、ある大学病院の先生による健康食品についての講演を聞いた。 本来、新薬を用いた治験を第一義とする大学病院にとって、効能のあいまいな健康食品など歯牙にもかけないと思っていたのだが、意外とEPA(エイコサペンタエン酸)を推していた。 EPAは青魚に多く含まれる不飽和脂肪酸で血中コレステロールや中性脂肪を下げる働きがあるが、青魚でも健康食品でも医薬品でも全く同じ成分が摂取できる珍しい事例だという。 もちろん含量は違う。生イワシ1匹(150g)にEPAは1800mg。ニッスイの特保「イマーク」1本(100ml)だと600mg。そして、病院が処方する持田製薬の「エパデールS900」1包なら900mg。 当然、純度は医薬品の圧勝だが、生イワシ1匹と医薬品2包が同含量なのだから、食品もあなどれない。 他に、筆者が愛用している健康食品の医学的根拠など聞いてみたかったが、最近抗酸化サプリのマイナス評価が続出しており、やめた。「ビタミン剤は死亡率を上げる」「抗酸化物質は有害」など衝撃のレポートが出ているのだ。 例えば、1万8000人の男女を対象とした研究で、ビタミンAの一種を投与されたグループの肺ガン罹患率が28%、死亡率が17%上昇した。また、遺伝子操作により、有害とされるフリーラジカル(酸化物)を過剰生産する線虫をつくったところ、逆に32%長生きした。それどころか、この線虫に抗酸化物質であるビタミンCを投与すると、寿命の延長が起きなかったのだ。 つまり、老化の原因とされたフリーラジカルは悪者ではなく、それを消去してしまう抗酸化ビタミンの方が問題ということ。筋トレで筋肉をいじめることで強靱な肉体が得られるように、適度なフリーラジカルで細胞をいじめる方が寿命にはプラスということになる。 ビタミン神話は崩壊し、米国心臓病協会や米国糖尿病学会などは、ビタミン欠乏症患者以外、抗酸化物質のサプリメントを飲むべきではないと勧告している。 幸い、小生ビタミン剤は服用していないが、健康食品の評価など砂上の楼閣。いつ覆るかわからない。 ここは手堅くイワシの刺身でコレステロールを下げようと思う次第である。
|
column menu
|